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ダイハツ工業の認証申請における不正行為を現役バイヤーが考える

ダイハツ工業(株) Webサイトより

トヨタ傘下の完成車メーカーで不正が相次ぐ

トヨタグループの完成車メーカーが不正問題で揺れています。商業車メーカーである日野自動車は2022年に国内向けエンジンの排出ガスや燃費の不正が発覚。それらをきっかけに補償問題へと発展し経営再建のため2024年末にも三菱ふそうトラック・バスとの経営統合の予定となりトヨタの子会社からはずれることに。
日野自動車はこれまで国内商業車で、ダイハツ工業は国内軽自動車で何度もトップシェアを獲得しています。かつて世間であたりまえに評価されてきた燃費性能や安全性はある意味で「トヨタ品質だから」という安心感で守られていたようにも感じます。
そんな盤石と思われた両社が相次いで新車の販売停止という事態にまで追い込まれる事態となったことに自動車業界に携わっていたものとしては驚くばかりです。

新たに不正が判明した車種一覧(販売中の現行車種)

ダイハツ工業㈱ Webサイトより

どれも説明不要なほど売れている車ばかり。ここ数年で同社から新車を購入した場合、かなりの方が関連しているのではないでしょうか。

新たに不正が判明した車種一覧(生産終了した車種)

ダイハツ工業㈱ Webサイトより

次に生産終了している車種です。一番古いものでなんと1989年!アプローズという車ですがこちらは不人気車のため令和のいま乗り続けている人はほとんどいないものと推測されます。
しかしながら、過去に何度も軽自動車No.1の低燃費車として輝いたミライースや人気のコンパクトSUVとして有名なロッキーなどは現行車種として認識している方も多いのではないでしょうか。ロッキーは一連の問題に関連して生産終了に追い込まれたのかもしれません。

新たに不正が判明した車種(海外生産車種)

ダイハツ工業㈱ Webサイトより

日本在住であれば関係ありませんが、アジアなどの新興国でも人気のダイハツ。日本ほどの騒ぎになっているのか現時点では不明ですが、その販売台数は凄まじいものになっています。

日野自動車で発覚した不正との違いとは?

・日野自動車は燃費性能の不正=金銭補償

・ダイハツは安全に関わる認証手続きで不正 
 ➡ 人命に関わる(実際は事故が起きて初めて問題が顕在化するが、「信用」という観点で大きなダメージとなり得る

日野自動車は商業車を販売するメーカー(一部トヨタブランドの車も生産)です。そして2022年に発覚したのは主に燃費性能についての不正。1リットルあたりで走行できる距離を多く申告していたために、それらの燃費性能を信じて購入していたユーザーに対して実際の燃費との不足分を金銭の補償というかたちで対処しました。

そして今回のダイハツですが、こちらは車の安全性を評価する認証試験で不正(不正加工や虚偽記載など)を行っています。よって、日野自動車との違いは金銭的な問題ではなく人命に所関わるかもしれないという点にあると考えます。

具体的な不正の内容とは?

・側面衝突試験の認証申請で樹脂製のドアトリム裏面に量販車と異なる手加工を行った
・ポール側面衝突試験の認証手続きにおいて助手席側の試験結果を運転席側の試験結果として提出(本来は運転席側の試験も必要)

上記は一例ですが、消費者が車を選ぶ際に重視される項目のひとつである「安全性」を評価する試験でこのような不正が起きたことは、トヨタグループとして築き上げた信用を大きく毀損する結果になりました。

問題の本質はどこにあるのか

ダイハツ工業がWebサイトで公開した調査報告書の概要版を一読すると、報道のイメージと実際の問題に大きな差があることに気づきました。
やはり組織文化や風土といった根深い問題が今回の不正を引き起こした(実際は1980年代から続いていた)のだと感じさせられました。
認証試験で不正を働くことは当然ダメな訳ですが、やり直しがきかない(その権限や予算がない)状況のためやむなく不正を働いてしまったのかもしれません。

不正が起きた原因として調査報告書には以下のような項目が列記されています。

・過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー
・現場任せで管理職が関与しない態勢
・ブラックボックス化した職場環境(チェック体制の不備等)
・法規の不十分な理解
・現場の担当者のコンプライアンス意識の希薄化、認証試験の軽視

これ、みなさんの会社にもあてはまる項目がありませんか?
調査報告書を読み進めると、上層部と現場の板挟みにあい苦悩する担当者の姿が目に浮かびます。

ニュースの表層的なイメージに流されず本質を見極めることが大切

「不正を行い新車販売を一時停止」
言葉だけを切り取ると販売された車自体にもの凄く重大な欠陥があるように感じた方も多いのではないでしょうか?
大切なのはどんな不正が行われ、それにより車自体にどんな問題があるのかです。

その一方で、安全面を考えると続報を待たなければいけないと感じる部分も・・・

キャスト/ピクシスジョイの側面衝突試験における「乗員救出性に関する安全性能(ドアロック解除)」が法規に適合していない可能性・・・

ダイハツ工業㈱ Webサイト第三者委員会による調査結果および今後の対応についてより抜粋

該当車種にお乗りのかたは引き続き注意が必要です。

ダイハツ工業はこれからが勝負。失墜した企業イメージをどこまで回復できるのか。車自体だけみれば素晴らしい技術を持つ企業であることは間違いありません。
そのため定量的に表せない「信頼・信用」をいかに取り戻すかが大きなカギになりそうです。

おわりに

この問題は様々なニュースで取り上げられつつあります。現在は関連企業の経営難についての懸念も取りざたされています。
起きた不正は決して許されることではありませんが、一部の当事者だけを執拗に責め立てたりすることなく発生した真因を突き止めて解決してもらいたいと願っています。
また、今回起きた不正は管理職と担当者、企業風土や競争に伴う過度なプレッシャーなど当事者が不正を行わざるを得なかった環境にこそ問題があるのかもしれません。

(本質的な)問題解決と早期の生産再開を応援しております。

では、また。

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嶺渡 岳(みねと がく)

3つの企業で購買職を経験。乾電池から石炭まであらゆる「買う」知識を習得。年間数十億の取引きで得たスキルを日常のお買い物へ活用する “おつかいの達人”。プライベートではUターン転職を果たすも年収200万減に。「貯蓄 ➡ 投資」を実践し年間100万円超えの配当収入を得る。50歳までにFI(経済的自立)を目指す。2児の父だがイクメンではない。

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