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バイヤーの裁量を決める決裁権限

今回のテーマは購買・調達部門における決裁権限についてです。購買部門所属のバイヤーさんはもちろん、商品を販売する立場の営業さんの視点も織り交ぜていますのでよろしければ最後までどうぞ。

バイヤーの価格決定権は意外と少ない?

これまで従業員数が数百名~1万名超えの各企業で購買・調達の仕事を経験してきました。
いずれの企業にも決済権限と呼ばれる社内規定が存在しており、細かなルールこそ違えど契約金額に応じて単価や金額を決定する権限が役職に応じて定められていました。

◆ 例

・担当バイヤー  スポット ~10万円以下。値上げ ~50万円/年 以下
・課長決済    スポット ~100万円以下。値上げ ~100万円/年 以下
・部長決裁    スポット ~500万円以下。値上げ ~1,000万円/年 以下
・取締役決裁   スポット ~1,000万円以下。値上げ ~3,000万円/年 以下
・社長決裁    スポット 1,001万円~。値上げ 3,001万円/年~

上記は一例ですが、スポット購入(設備など)とリピート購入(原材料など)によって権限が定められているケースが多いです。

大企業ほど役職が細分化され担当者ベースでの決裁権限(金額)が小さくなる傾向にあると感じます。これは、階層に応じた権限を細かく設定することでチェック機能が働くというメリットがある反面、担当者からすると差戻しの回数が増え(=交渉が長引く)社内外で「板挟み」の状態になりやすく特に価格変動の激しい時期にはメンタルを消耗する大きな要因にもなっています。

裁量=決裁権限ではない?!

このように見ると、担当バイヤーの権限は少なく相手の営業サイドからしたら担当バイヤーとの交渉はムダな時間に思えるかもしれません。時折、担当バイヤーを飛び越え露骨に決裁権限のある人間を探そうとする営業さんを見かけますがこれはあまりお勧めできません。それはなぜかというと担当者のメンツを潰すことになりかねず、以降の取引関係に支障が出る可能性があるからです。人間ってほんとめんどくさいですね…

さて、話を決裁権限に戻します。
取引先に頼られる担当バイヤーになる秘訣は社内調整スキルです。大きな組織になるほど営業さんは調達・購買だけでなく製造現場や技術開発部門へも気を配る必要があります。やる気のないバイヤーにあたってしまうと「その話は直接現場に言って」と切り捨てられることもしばしば。
一方で、担当バイヤーへある商品の提案を行い次に会ったら既に採用が決まっていたらどうでしょう。営業サイドとしたら言葉は少々悪いですが「この人は使える!」となりませんか?
この間、デキる担当バイヤーは社内調整に奔走し関連部署のコンセンサスを得るだけでなく上司からコストの承認を事前に得ているのです。

言い換えれば、決裁権限はないが営業サイドからは結果として裁量のある人間とみなされる訳です。

社内調整をするメリット

デキる営業さんはダメバイヤーの機嫌を損ねることなく他の部署のキーマンへ自らアプローチし相手企業を攻略していきます。だったらバイヤー自らそんな調整役をする必要なんてないのでは?と思うかもしれません。
しかし、ここでよく考えてみましょう。一見面倒に思う社内調整にも大きなメリットがあるんです。

社内の調整役となるメリット
  • 関連部署のキーマンと親しくなれる ➡ 他の業務で困ったときにも相談できる
  • 商品を使用する際の技術的な知識が身に付き、取引先との交渉に活かせる
  • 営業さんから信頼を得ることができムダな再交渉の回数が減る

入社年次にもよりますが、会社の規模が大きくなるほど他部署のスタッフとの関わりは少なくなりがち。しかし、自ら足を運びコミュニケーションを図ることで顔見知りを増やすことができます。これは想像するよりも大きなメリットです。別件で課題にぶつかったときなども他部署ならではの視点でアドバイスを得られるかもしれません。

また、購買・調達部門の人間に意外と多いのが自分が仕入れた商品がどこでどのように使われているのかを知らないケースです。ルーティンワークでは必要ない知識かもしれませんが、新商品の開発やコストダウンを検討する際には必須の情報となります。幅広くバイヤーとして活躍するためには一見必要のない情報でも積極的にアンテナを張ることをおすすめします。

最後のメリットは、営業さんの信頼を得られるということです。
営業さんはバイヤーと同じく交渉に関しては百戦錬磨の達人です。特にバイヤーと違うのは相手の人柄や社内でのポジションなどを見極める力が優れている点です。そんな営業さんにデキるバイヤーと認められることで、例えば値上げの交渉についても数回にかけて妥協点を探るといった行為が削減できお互いギリギリのラインの見極めを初回の交渉から実行できるのです。また、情報に関しても相手の営業さんに「何とかこのバイヤーさんを味方につけたい!」と思わせることで本来は開示しないような業界情報や社内事情などを開示してくれることもあるのです。

ある同僚のはなし

ここからは経験談ですが、以前の同僚に他部署とまったく関わろうとしない人が居ました。当然彼の取引先の営業さんは自社製品の導入を目指し他部署のキーマンを攻略し見事販売にこぎつけたのです。結果、他部署のスタッフは何か商品について知りたいことがあった時、同じ社内の同僚ではなく真っ先に取引先の営業さんへ連絡を取るようになってしまいました。技術情報など込み入った内容であればそれも悪いことではありませんが、本来このような状況を作ってしまうということはバイヤーとして恥ずべき事であると個人的には思っています。

こうなってしまうと、バイヤーとして入り込む余地はなくなりいざ「競争購買だ!」と声を上げたところで社内からも抵抗を受けるのは目に見えています。そうならないためにもまずは自分が社内外のパイプ役となり人脈を広げること強くおすすめします。

おわりに

今回は ”決裁権限” をキーワードに社内調整役を引き受けることの重要性について考えてみました。
社内調整は苦手な人とも接する必要があり気が進まない方も多いと思います。しかし、それらを実行することにより他部署とのコミュニケーションをはかれるようになると、ある時から驚くほど仕事が円滑に回るようになります。

ひとつだけ注意しておきたいことがあります。
最近は営業職のかたもちらほら当ブログを訪ねてくれているため、もし担当バイヤーを飛ばしてキーマンを攻略する場合はもろ刃の剣であることを理解し細心の注意を払ったうえで実行しましょう。
本当に鈍感なバイヤーであれば心配ありませんが、そんな人ほどプライドだけは一人前だったりします。そうなると、自分を飛び越えて営業をかけた相手を根に持ってビジネスを妨害される可能性すらあります。(実際に好き嫌いでそのようなアクションを起こす人を何度も見てきました…)
もし、担当バイヤーさんの調整力が乏しく話がいっこうに進まない場合は丁寧に他部署のキーマンを聞き出し事前にコンタクトを取ることを承諾させたうえで攻略を進めてみましょう。

バイヤーと営業どっちの味方なんだと怒られそうですがビジネスにおける日々の交渉は双方の努力があって成り立っています。私はこのブログがそんな頑張るバイヤーさん・営業さんの教科書に載っていなないリアルなケーススタディとしてお役に立てれば嬉しい限りです。
理不尽なシチュエーションに遭遇することもあるかと思いますますが共に乗り越えていきましょう!

では、また。

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嶺渡 岳(みねと がく)

3つの企業で購買職を経験。乾電池から石炭まであらゆる「買う」知識を習得。年間数十億の取引きで得たスキルを日常のお買い物へ活用する “おつかいの達人”。プライベートではUターン転職を果たすも年収200万減に。「貯蓄 ➡ 投資」を実践し年間100万円超えの配当収入を得る。50歳までにFI(経済的自立)を目指す。2児の父だがイクメンではない。

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