PR
スポンサーリンク

暇つぶしに来社する営業

今は少なくなった「古き良き」営業スタイル

バイヤーとして15年を超える月日が経過しました。
その間に計3社の企業で購買業務を通じて4桁を超える営業さんと出会わせて頂きました。
今回は「暇つぶしに来社する営業マン」についてのお話です。

年配の社長さんやバイヤーさんからよく聞く営業マンを評価する尺度として来社する頻度があります。「あいつは頼み事がある時しか来ない!」というセリフを聞いたことがあるほど。そんな人たちに好まれる営業マンとは用がなくても頻繁に顔を見せるひとでした。

雑談のなかからビジネスの種を拾う

その昔は、御用聞きともいわれ用事がなくても「○○さんの顔を見に来ました~」と言いながら他愛のない雑談を通して仕事を拾う営業スタイルがありました。これ、簡単なように見えて結構高度な技です。発注権のある人物を見つけ出し、その相手と雑談のためにアポを取れる関係を築く対人スキルやちょっとした会話からビジネスチャンスを見つけ出す能力がなければ成り立ちません。
私が社会人になった頃はこのような営業スタイルの方がまだ存在していましたし、そのような営業マンを好む先輩バイヤーさんがいたのも事実です。

現代のバイヤーは超多忙?

私はこれまで3社ほどの企業を経験しましたが、会社の規模によってもバイヤーとして求められる内容が大きく異なりました。
新卒で入社した企業はいわゆる典型的なJTC(Japanese Traditional Company)。コストダウンの目標などそれなりにあるものの、商談時間は自由に確保できる環境でした。そのためお会いする営業さんには当日の課題を手短に済ませたうえで、購入している商品の知識や業界動向について質問をよくしていました。時間が余れば世間話をすることもしばしば。

しかし、次に転職した超大企業では一日の発注件数だけで数千件。それらに加えて価格交渉やら品質問題やらを決められた時間でこなす必要があります。加えて残業等の管理がしっかりしているためサービス残業こそありませんが、言い換えれば時間の管理が厳しく残業をするにも上司から説明を求められるほど。
そのような状況下では、直接顔を合わせて商談をする事すら叶わずメールや電話で済ませることが自然と増えてきます。
最近の大企業では特にこのような傾向がより強くなっている印象があります。

過去最強の「暇つぶし営業マン」現る

その男が現れたのは1社目の企業に在籍していた時です。
いつもながら当日の課題を済ませた私は、製品や業界動向についてヒアリング。ところが情報らしい情報が出てきません。ネットの無料記事でわかる範囲の世間話程度で会話が終わるため早々に打ち合わせを終了させました。
ところが1か月後、またアポ取りの電話。特に進行中の案件もなくその企業とは発展性のある商品もないので不思議に思いながらも「値上げかな?」などと思いつつ打ち合わせに出席。するとまずは世間話からスタート。ここまではよくある話ですがその後10分、20分…と経過しても仕事に関係する話は出てきません。
結局何もないまま雑談だけで終了。当時20代で若手バイヤーだった私も「えっ?」と戸惑いました。そして自席に戻りようやく状況を理解しました。

この人は外回りで時間を稼ぐために寄っただけだったのだと。

営業として事務所に座り続けるわけにもいかず、初対面であれこれ雑談や質問を投げかけてきた若手バイヤーだった私は格好の暇つぶし相手になっていたのです。
更に驚くことに、1か月後またアポ取りの電話が。さすがに電話口で要件をたずねるもそれらしい返答がなかったためお断りさせていただいたのでした。

おわりに|自分に落ち度がないかも考える

バイヤーの仕事は紙一重です。
商談中の何気ない会話や情報が後の調達戦略にプラスの影響を与えてくれた経験が何度もありました。しかし、相手に「雑談や顔を見せることが仕事」と思わせてしまった自分にも落ち度があったのだと後に気づきます。
アポイントの段階で事前に要件を聞いたり、当日の雑談のなかでも時間を区切り本題へ促すようなスキルが当時の自分に不足していた事を痛感。きちんと意思表示をすることで相手にも「この人は訪問頻度が重要ではないんだな」と理解してもらえたのかもしれません。

しかしながら、現役バイヤーとしてやはり高頻度の訪問や簡易な要件(メールで済む)だけでのアポイントは敬遠される傾向にあると感じます。残業を削減する企業が増えるなか面談で雑談をするなど「余白」のようなものが真っ先に削られていくでしょう。

と言いながら、直接お会いするなかで時には雑談を通して関係を構築することがその後のビジネスを円滑に進める助けとなることも多々ありますしそんな関係づくりはむしろ好きです。
下請法の順守が周知される前の時代に横行した過剰な接待などは問題外ですが、あまりにドライすぎる対応だと営業さんもひとりの人間なので円滑な関係構築は難しくなるでしょう。
偏った視点だけでは見落としがちなことも多いので、時にはムダと思えることに時間を割いてみると思わぬ発見があるかもしれません。

相手先の企業との関係性や今後の戦略などによってバイヤーとして考えるべき立ち位置は常に変化します。個人の好き嫌いではなく企業対企業としてどう振舞うのが最良か考えるのも大事なポイントです。

バイヤーのお仕事は本当に奥が深いですね…

では、また。

ブログランキング・にほんブログ村へ
嶺渡 岳(みねと がく)

3つの企業で購買職を経験。乾電池から石炭まであらゆる「買う」知識を習得。年間数十億の取引きで得たスキルを日常のお買い物へ活用する “おつかいの達人”。プライベートではUターン転職を果たすも年収200万減に。「貯蓄 ➡ 投資」を実践し年間100万円超えの配当収入を得る。50歳までにFI(経済的自立)を目指す。2児の父だがイクメンではない。

※プロフィール詳細はなまえをクリック

嶺渡 岳(みねと がく)をフォローする

コメント